小さなお子さんを持つ親御さんにとって、虫歯予防は大切な課題の一つではないでしょうか。
「乳歯は虫歯になってもそのうち抜けるから大丈夫」と考えている方はご用心。子どもの歯が虫歯になると、永久歯の健康にも悪影響を及ぼすのです。
今回より3回連続で、歯科衛生士の乃島みなみによる子どもの歯とお口の健康に関するコラムをお届けします!
6月は「歯と口の健康習慣」
ぜひ、大切なご家族のお口の健康について改めて考えてみませんか?
◇乃島みなみ◇
地域の歯科クリニックに35年間勤務する歯科衛生士。
「自分の家族のように患者さんに接する」がモットー。
ついやってしまう「ダラダラ食べ」が虫歯の原因
電車の中で静かにしてほしいからキャンディを舐めさせておく
泣き止むようにおやつを与える
なかなか寝付かないので、仕方なくアイスを与えた・・・などなど。
育児中はついついやってしまいがちな行動ですが、実はすべて虫歯を引き起こす原因なのです。
はじめに、虫歯ができる仕組みを簡単にご説明しましょう。
食事やおやつの後は、虫歯菌が糖を分解して酸をつくるため、口内のpH数が酸性に傾きます。すると、歯が溶け出して虫歯ができやすくなるのです。
しかし、大量に唾液が出ることで口内のpH数が酸性から中性に戻り、虫歯の進行を妨げることができます。
注意しなくてはいけないのは、お口の中がずっと酸性の状態であること。
口内が中性に戻る間もなく、食べ物を口にしていると虫歯が進行する環境ができあがります。
つまり、決まった時間に食事をせず、上述した事例のような「ダラダラ食べ」をすることが虫歯の原因となります。
虫歯予防でいちばん大切なことは、規則正しい生活
虫歯を予防するために歯磨きをすることはもちろん大切です。
でも、歯磨きをすること以上に大切にしていただきたいことがあるんです。
それは、規則正しい生活。
1日3回の食事。十分な睡眠。そして、外で思い切り体を動かして遊ぶこと。
一見、虫歯予防とはあまり関係ないことのように思いますよね?
しかし、規則正しい生活を送ることは、お口の中の状態に関係してくるのです。
日中に思い切り体を動かして遊べば、自然にお腹が減り、決まった時間に食事ができるようになります。
夜更かしをせず眠ることで、早起きをして朝ごはんを食べることができます。
食事の正しいリズムが習慣になることで、「ダラダラ食べ」を避け、お口の中を健やかな状態に保つことができるのです。
乳歯の虫歯は、永久歯にも影響を与える
虫歯になったことがある方はご存知かと思いますが、虫歯になると歯がズキズキと痛み、集中力が低下します。勉強や仕事に集中できない……という経験をした方もいるのではないでしょうか。
そして、痛みのせいでしっかりと食べ物を噛むことができないため、お子さんの顎の発達を妨げてしまいます。健やかな成長・発達のためにも、虫歯にならないように気をつけたいですね。
虫歯になったとしても、いずれ乳歯は抜けて永久歯に生え変わるから……と安心してはいけません。
乳歯の虫歯は、次に生えてくる永久歯にも影響を与えるのです。
虫歯が進行すると、歯の根元に膿がたまります。そこから生えてくる永久歯は虫歯になりやすく、曲がって生えてくる可能性も。
歯並びが悪くなると歯磨きがしにくいため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
妊娠中から始まっている子どもの虫歯予防
実は、子どもの虫歯予防はお母さんのお腹の中から始まっています。歯冠が完成するのは生まれてからになりますが、歯のもととなる「歯胚」は妊娠初期から形成され始めます。
丈夫な歯を作るためには、お母さんが栄養バランスに気をつけて食事をすることが大切です。
また、生まれたばかりの赤ちゃんの口内には虫歯菌がいません。虫歯菌は、食器や食べかけの食べ物を介して子どもにうつるのです。
お子さんが大きくなり集団生活が始まると、他者と食べ物をシェアしてコミュニケーションを図る機会も増えるため、虫歯菌を全く口内に入れないというのは難しくなります。
しかし、家庭で過ごす時間が多い小さな頃は、虫歯菌がうつらないように配慮してあげてください。
第2回目のテーマは、「虫歯になりにくいおやつのすすめ」です。お楽しみに!
(編集:佐藤愛美)