レポート

保育園を起点に「人」や「まち」をつなぐ。コミュニティコーディネーターというお仕事(後編)

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前編ではKanade流山セントラルパーク保育園のコミュニティコーディネーター 滝口優さんにインタビューし、どのようなお仕事をされているかをお聞きしてきました。

後編では、実際にどのような保育園で、どういった活動をしているかについてお伝えします。

Kanade流山セントラルパーク保育園って、どんなところ?

Kanade流山セントラルパーク保育園は、2018年のはじめに建てられたマンションの一角にあります。
1階が子育て支援センター、2階が保育園です。

こちらは子育て支援センター。

本の貸し出しもしています。絵本だけでなく、大人向けの本もありました。
子育て支援センターに遊びに来られたお子さんの食事の悩みに、保育園の栄養士さんが答えるという取り組みも。
 

支援センター脇のドアからは、保育園の園庭に出ることができます。
コンクリートの更地に砂を敷き詰めることから始め、保護者の方にもお手伝いいただきながら砂場を作ったりしたのだそう。これからどんどん作り込んでいくのだそうです。どんな園庭になるのでしょう、楽しみです。

支援センターから保育園へと上がる階段のそばには、保育園の今日の給食メニューのサンプルが置かれています。
保育園に登園していないお子さんをお持ちのご家庭にとっても、参考にできそうですね。

階段の途中の壁を使って、子どもたちの園でのちょっとした様子を動画で流し、お迎えに来た保護者の方に見ていただけるようにしています。
手すりの曲がる部分、ここは建築担当の方のこだわりで、木を繋いでいるのだそう!
こうした保育以外のポイントについても掲示を出して、大人の方が読めるようにしてありました。

 

園の給食をつくるための調理室も2階にあります。
食育活動に「0歳 みかんジュースづくり」と書いてありました!0歳という小さい年齢の子どもたちも、保育士さんや調理師さんと一緒に、みかんに触れながらジュースをつくるのだそうです。

大人にとっても居心地の良い場所にしたい

滝口:保育士さんたちの休憩時間は、園長に保育に入ってもらうなどして、必ず確保できるようにしています。
子どもと離れる時間がないと、保育者もいい保育ができないですから。

佐藤:休憩時間が必ず確保されているというのは、園で働いている方にとっては安心できますね。

滝口:保育者が充実していないというのは、子どもにとって一番良くないですからね。
ぼくらがイライラしていると、子どもに伝わりますから。

そういう意味でも魅せるための行事はせず、子どもたちに集中できるようにしています。日本古来の七夕やお月見はやりますが、運動会はありません。練習に時間を割かなければならないので子どもたちの日常ややりたいことが置き去りになってしまうし、大人が「はいこれをやりましょう」と主導するのは、ぼくらが本来やりたいと思っている保育と違うんです。
保護者の方も一緒に楽しむ行事としては「親子で楽しむ会」があり、こちらは日々の練習を必要としない、その日に親子で集まって楽しむことができる内容で組み立てています。

お誕生会は、子どもたちに企画してもらっています。いまは4、5歳児クラスの子どもたち7人がアイディアを出して、電気を消したり、歌をうたったり、つくったお花や王冠をあげたり、そういったことをしていますね。
ぼくたちは、写真や手形といった、簡単なものだけ用意しています。

園内の、うさぎちゃんやくまちゃんなどの飾りつけもしていないんです。

子どもたちが「歓迎されている」と感じることができるよう、子どもたちの写真や作ったもの、つまりドキュメンテーションを置くことは大事だと思っていますが、飾り付け自体には本当に手をかけていないです。

はしもと:園内の雰囲気が大人っぽいですね。

滝口:大人の方も来られるので、あまり子どもじみず、落ち着いた雰囲気にしておきたいんです。
うさぎちゃんの掲示物に囲まれたりすると、なんだか違和感でどきどきしちゃうんですよね・・。

はしもと:園を地域の拠点にしたいとおっしゃっていましたもんね。園を子どもだけのものにせず、大人もなじみやすいと思います。

子どもたちが「やりたい」と思ったときにやれる環境を整えたい

滝口:子どもたちはものを作ったり絵をかくことが好きなので、最近はアーティストの方に週1回来ていただいています。園の近くでも活動されている方で、ブログなどを拝見したところ子ども観やアートを通じて教えたいことが、ぼくらと似ていたんです。
それで実際に活動を見に行きお話してみて、「やっぱりこの人だな」と思い、ご相談して園に来てもらえることになりました。

はしもと:そうした考え方のすりあわせも滝口さんがやった上で、園とつなげるんですね

滝口:アーティストの方は、どもたちが自信をもって自分を表現できるようになってほしい、そしてお友だちにも、その表現を尊重してほしいと、考えています。
そうした活動をするなら、子どもたち同士でコミュニケーションを取ったり、物を大切にできる必要があるので、それらをアートを通じて教えたいと思ってくれています。
そういうところが、私たちの考えとぴったりだったんですよ。まだ数回ですが、上手に子どもたちと関わってくださっています。

はしもと:絵のかき方を教えてほしいわけでは、ないんですね。

滝口:はい。絵を上手にかけること自体は素晴らしいことですが、それよりも自分の作品をつくる中で「どんなことを考えながら作ったのか」「どうしてこの色を選んだか」、そういったことを子どもたちに聞きながら活動を進めてくださっています。
子どもたちも、できた作品だけではなく、作っている途中から自分のことを大切にされていると、感じることができているようです。

滝口:いまはアーティストの方が主導して「今日はこんなことをします」と活動をしていますが、最終目標は、園内にいろいろな素材を置いておき、子どもたちが自由に取り出して、その日、自分がやりたいと思う活動ができるようにすることなんです。
絵をかいたり、なにか作ったりしたい子は、アーティストの方のコーナーに行ってもらい、好きな素材を使って主体的に活動してもらう、といったように。

はしもと:ほかにもが子ども観が合う方が地域にいれば園に来てもらい、子どもが「今日はこれやりたい」と思ったらその活動ができるような環境を、整えていきたいってことなんですね。

滝口:そうです。たとえば子どもたちが虫に興味を持っていたら、虫に詳しい方に来ていただいていっしょに公園で虫の採り方を学んだり、そういうことをやりたいですね。決められたイベントを地域の方とやるよりも、子どもたちの興味関心から、活動を組み立てたいと思っています。
学びを深めていきたいので、月1回であっても継続的に来てくれる方がいらっしゃればすごく嬉しいですね。
子どもたちも「その人に会えるからがんばろう」っていう気持ちがあって、良い刺激を受けますしね。

滝口:「0歳から積み上げる」ということを大事にしたいと思っています。
絵の具や紙といった素材や道具に小さいころから触れていくと、子どもって学ぶので、使い方を会得していきます。
いきなり絵の具を与えられても、子どもたちはどう使えばい
いか分からないので、0歳から少しずつ触れていくことで素材に慣れ、3・4・5歳児からはより発展した活動ができるようになるといいなと思っています。

開園して半年やってみて分かった課題が、扱い方に慣れていない素材や初めての環境には、子どもたちも戸惑うということなんです。
素材をあるだけ使ってしまったり、自分が作った作品に愛着がなかったり。
いま立て直していますが、本当は子どもたちが、やりたいときにやれることができる環境を工夫して整えてあげたいと思っています。これが、難しいんですが・・

佐藤:まだ開園して半年ですし、積み上げだったり、園の文化として浸透するまでには、どうしても時間がかかりますよね。何年スパンでその文化をつくろうとされていますか?

滝口:よく、園の文化は3年で決まると言われています。当然、今も全力で保育をしています。今いる子どもたちの活動も大切にしながら、3年後に花開くといいなと思ってやっていますね。「あ、Kanadeの保育できてきたな」って、3年後くらいに思えたら、嬉しいです。

ちょうど良いつながりやコミュニティを楽しみながら作る

はしもと:滝口さん、苦しいときってありますか?

滝口:いまは無いですね。

はしもと:いつお会いしても、滝口さんは楽しそうですよね。

滝口:楽しいですね、ほんと。

はしもと:人とのつながりを新しく作ることに対して、怖い・しんどいって思う人もいるんじゃないかと思うんです。例えば先入観で「ママ友=怖い」と思ってしまうみたいに。
転入してきたご家庭も多く、新園で先生たちの団結もこれから、そういった中でコミュニティコーディネーターというコミュニティの橋渡しをする役割の方が、楽しそうにつながりを作っているというのが、本当にいいなって思います。

滝口:「無理のない場」っていうのが、いいと思うんですよね。
行きたくないけど行かなきゃいけない、っていうつながりよりは、なんとなく行って、なんとなくつながって、なんとなくまた次会う。それくらいが気持ちいいのかなって思います。

はしもと:付かず離れず。

滝口:好きじゃないところに居てしまう方は、もしかすると、どこかに所属しないと一人になってしまうかもしれない、っていう不安な気持ちがあるのかもしれないですね。いろいろなコミュニティがあると自分にとって居心地の良い場所を選べるから、そういうのが大事かなって、思っています。

はしもと:いろいろなコミュニティやつながりを生んだり、作っていくことが、安心して子どもを育てることができるまちづくりにつながる。
こんな形の見えないことを、頭の中で描きながら活動されているのが、これまたすごいです。やっぱり、楽しいからできちゃうんですか?

滝口:はい、楽しんじゃってます 笑
自分が携わっている園のイベントに、園に通っていない子も参加できるようにしていて、ぼくも自分の子どもたちを連れて参加しちゃうんです。

佐藤:境目が無いんですね。

滝口:そうですね、遊びと仕事の境界線が薄くなってきている感覚があります。
ぼくは住まいが茨城ですが、休日に流山に遊びに来ることで、誰かとおつながりができたらいいなって気持ちもありますし、だからノリで、楽しく仕事しています。「これやっちゃうと、すごく面白いんじゃない?!」って。

さっきお話したファーマーズマーケットも、地域の方に楽しんでもらいたいのはもちろんですが、自分も子どもを連れてきて楽しんじゃおうと思っています。農家さんとお話しながらおいしい野菜を買って、それでローカル線も乗れちゃったら最高だなって。

ぼくにとっても無理のない楽しい場になっていれば、しんどくないつながりを作れているってことだと思います。

 

「Kanadeは、これからどんどん変わっていくと思います。また半年後に遊びに来てください!」と声をかけてくださった滝口さん。

園の保育も、関係性づくりも、地域の方との活動も、少しずつ種をまきながら芽が出始めているところ。

子どもたちの日常を大事にしながら、Kanade流山セントラルパーク保育園を中心にどんなつながりが地域にできていくのか、これからがとても楽しみです。

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