イベントインタビューサポート

祖父母とパパママの架け橋。孫育て・ニッポン理事長ぼうだあきこさんに聞く子育ての話

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「子どもたちが健やかに育つためには、まずは家庭の土台がしっかりしていること。その土台がグラグラしていたら、どんなに教育をしても積み上がっていきません。そして、パパやママだけで子育てをすることはとても大変です。じぃじ、ばぁば、そして地域の人たちがサポーターになって、子育ての輪を広げていくことが大切だと思っています」

そう語るのは、NPO法人孫育て・ニッポンの理事長を務めるぼうだあきこさん。

過去に育児分野の編集者として働いていた経験を活かし、社会の中に子育てや孫育ての輪を広げるため啓発活動を行なっています。

ぼうださんが考える、今の子育てに必要なこととは?

お話を聞いてみました。

ぼうだ あきこ さん

NPO法人孫育て・ニッポン理事長。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事。「3・3産後プロジェクト」リーダー。これまでには育児雑誌や医療系編集、育児サイトの立ち上げ、運営、企画会社などで活躍。2011年NPO法人孫育て・ニッポンを設立。全国各地で孫育てや子育てに関連した講座、行政との共同プロジェクトを行う。男の子二人の子育てを経験した母でもある。

新米ママたちと一緒に考える、祖父母との上手な付き合い方

「ママたちにとって、理想のじぃじ、ばぁばってどんな感じだと思う?」

全国各地で子育てや孫育てに関する講座やプロジェクトを行なっているぼうださん。この日は大和市の生涯学習センターが主催する子育て1年目のママを対象にした講座に、講師として登壇していました。

「どう違う?今と少し昔の子育て事情」というテーマのもと、祖父母(ママたちにとっての両親、義両親)と賢く付き合うためのヒントを参加者たちに伝えていきます。

ぼうださんが祖父母に対しての思いを尋ねると、ママたちからあがった声は「育児方針と違うことをされて困る」「いらないものを貰っても困る」といったもの。

ぼうださんは、NPOで作成した「祖父母とのおつきあい10か条」「孫育て10か条」をもとに、1人ひとりの声に丁寧に答えていきます。

講師が一方的に正解を伝えるのではなく、その場にいる人が対話をしながら正解を作っていくこともぼうださんが大切にしているスタンスの1つ。ママ同士がペアを作って自分の祖父母について話し合う時間も。初対面のママが多いにもかかわらず、子どもの月齢が近いこともあってか会話がはずみます。

「ママたちにはこれから出会う友達や昔からの友達もたくさんいると思うけど、子どもが赤ちゃんの頃に出会ったママ友って本当に大事なの。私自身も、子どもが生まれたばかりの時に出会った仲間に支えられました」

と、自身の経験を振り返って伝えるぼうださんは、ママ同士、そして祖父母とママたちの間に立って、お互いの声を届ける架け橋のような存在です。

子育て情報の世代間共有が難しい現代。編集者時代の経験を活かし、啓発活動を行う

もともとは編集者だったぼうださんは、なぜ現在の活動を始めたのでしょうか。

「NPOを立ち上げる前は、育児関連の編集や企画の仕事をしていました。妊婦さんの運動療法を研究している産婦人科の施設に編集職として勤めていたことや、育児サイトを立ち上げた経験が今に活きていると感じます。編集の仕事をする中で、ママたちが祖父母とぶつかっている様子を見て、子育てを取り巻く大人たちの間に世代間ギャップが存在することに気づきました。しかし、当時はそういった問題を言語化している人が誰もいなくて、ママたちは困ってましたね」

ぼうださんが孫育ての分野に携わるようになったのは、2003年頃のこと。

「2003年頃、育児サイトをリニューアルするにあたり、母親向けの情報だけでなく、父親向けのコンテンツに加えて祖父母向けのコンテンツを作ってみたんです。母親に向けた育児情報は世の中にたくさんあっても、父親、祖父母向けの育児、孫育ての情報ってほとんどなかったんですよね。中でも注目を集めたのが孫育ての情報。サイトを介し、昔の育児と今の育児の違いやパパ・ママ、孫とのかかわり方などを発信していったんです。すると、パパやママたちからは『これまで言いたくても言えなかったことを代弁してもらえた』と好評の声が。特に、ママたちって義理の両親に対して本音を言いづらいじゃないですか。祖父母向けの育児情報が存在することで、ママたちの心の負担が軽くなったみたいです」

子育ての情報が、祖父母にまで届きにくいという事実。その理由について、ぼうださんはこのように考えます。

もともと日本は子沢山の国で、一家の中に5〜6人の子どもと祖父母が同居しているのが当たり前でした。いちばん下の子を育てているときに、いちばん上の子が子どもを産んでいるというのも珍しくなかったので、家庭の中で育児情報のアップデートが可能だったんですよね。もしくは地域社会の中で自然に育児の情報共有ができていたんです。

でも、今は少子化、核家族が多いので、それがとても難しい。子どもとかかわることだけでなく、子どもを見る機会も減りました。現代の子育ては、経験からでなく、文字情報からしか子育てを学べない状況です。たとえば、目の前で子どもが走り回っていたら、『あれくらいの時期って走るよねー』といったように祖父母と共有できるけど、そういう機会が昔に比べて減ってしまいました。これは、現代の子育てが悪いということではなく、社会が大きく変化しているのだから仕方のないこと。その中でどうしていくかが大切なんです」

ぼうださんがNPO法人孫育て・ニッポンを設立したのは2011年9月、東日本大震災があった年でした。以降、子育てに関わる人たちに向けて啓発活動を行なってきました。

「地域の人やおじいちゃん、おばあちゃんが子育ての良きサポーターとなり、子どもたちが健やかに育つ社会づくりを目指しています。変化の激しい時代の中で、パパもママもじいじばあばも、もう一度、現代の子育てで何が大切なのかを一緒に考えていけたらいいなと思っています

残したい。手仕事をしながら会話が弾む場所

孫育て・ニッポンは、「背守りプロジェクト」という手仕事を通した場作りの推進も行なっています。

「講演で東北へ行った時に、地元のばぁばから言われたことが忘れられません。『昔はお嫁さんたちが集会場に集まって手仕事をしていた。そこで手を動かしながら姑や旦那の愚痴を話していたのに、今の若い人はただくっちゃべるだけで、何も生産物がない。』って。

手を動かしながら日頃の不満や悩みを言って、その日に作ったものを家に持ち帰る。楽しいおしゃべりと愚痴と生産物がセットなので、ストレス解消と達成感、そして、社会・地域とのつながりも生まれる。そんな場所と時間を現代でも作れないかと考えていた時に、子どもの魔除けとして産着の背中に縫い付ける“背守り”と出会ったんです」

ぼうださんは誰でも簡単に扱うことができる背守りのキットを作り、現在は「背守りちくちく」の会を定期開催しています。参加者は未婚の方から子育て中のママ、おじいちゃん、おばあちゃんまで幅広く、さまざまな世代の人が集まっているとのこと。

手仕事のプロジェクト第二弾として、「ビュンビュンごま」のワークショップもスタートしています。

世代を超えて子育ての輪が広がっていく

昔の当たり前と、現代の子育て家族が求めていること。

その両方に意識を向け、より楽しく、幸せな子育ての輪が広がるように試行錯誤を続けるぼうださん。

「私自身も、孫育て・ニッポンの活動を通してたくさんの先輩たちに出会い、知恵をもらいました。そういう知恵が次世代まで伝わっていくようにしたいですね。そして、子育ての輪が家庭を起点にどんどん広がっていくように、今後も活動を続けていきたいと思います」

楽しい時間を一緒に過ごした人同士は、辛い時にも支え合える仲間になる。

ぼうださんの活動をきっかけに、子どもたちの成長を見守るあたたかい輪が広がっていきます。

 

【information】

NPO法人孫育て・ニッポンの活動についはこちら

https://www.magosodate-nippon.org/

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*

CAPTCHA