イベントインタビュー教育

表現することが自信に繋がる。こども図工教室 YAKKE

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世田谷区のFACTORYを拠点に毎月開催されている「こども図工教室 YAKKE」。

ここは、こどもと“おおきなこども”が一緒に表現することを楽しむことができる場所。

「図工教室に参加する子どもたちはみんな私のライバル。毎回『そう来たか!』の連続で、彼らの表現力には本当に驚かされています。ものづくりをする大人として、負けてられないですね

そう語るのはYAKKEの代表である鈴木友唯さん。

Eテレのデザイナーとしてこども番組の製作を手掛ける鈴木さんは、なぜYAKKEの活動を始めたのでしょうか?

教室にお邪魔してお話を伺いました。

鈴木友唯さん

ドローイングアンドマニュアル株式会社所属。アートディレクター、デザイナー、イラストレーターとして活躍中。Eテレの子ども番組のキャラクターデザイン、連続テレビ小説「なつぞら」のポスターデザインのほか、舞台美術やイラスト製作などに携わる。学生時代から子ども向けのワークショップを開催し、大人も子どもも楽しむことができる場所づくりを行なってきた。「こども図工教室 YAKKE」代表。

なぜ作る?なにを作る?考えて、作って、伝える図工教室

「こども図工教室 YAKKE」は、2019年4月からスタートした、子どもと大人が一緒にものづくりを楽しむことができる図工教室。

デザイナーの鈴木さんを筆頭に、木工職人やテキスタイルデザイナーなど、“ものづくりのプロ”たちが教室の内容に合わせて講師を務めます。

図工教室の会場はまるで秘密基地のような地下の撮影スタジオ。一歩足を踏み入れるとそこには、テーマに沿って作り込んだ世界観が広がっていました。

取材で訪れた日のテーマは「ブクブク はっけん!フシギなかいていとし」

図工教室を始める前には、YAKKEのメンバーが劇やムービーでストーリーを伝えるのが恒例。

「海底のダサダサタウンを、みんなの力でイケイケタウンに変えちゃって!」

という海底都市の“市長”のお願いを聞いて、何を作ろうか考え始めるところから図工の時間がスタートします。

絵の具や折り紙、ダンボール、マジックペン、カラーテープ、空き容器……etc.

作りたいものを思い切り作ることができるように、会場には多種多様な材料が揃っています。

アイデアに任せて使う道具を選び、貼ったり、切ったり、組み合わせたり。

「ここをもう少し長くしたいなあ」「この材料も使ってみる?」

YAKKEメンバーやおうちの人とやりとりをしながら、みんなの思い思いの作品が出来上がっていきます。

作品が完成した後は、作ったものをみんなの前で発表する時間。

何を作ったのか、どんな風に、どんな思いで作ったのかを言葉で伝えていきます。

YAKKEは、ただ図工の技術を学ぶだけの教室ではありません。

自分が作ろうとしているものをよく考え、作ったことの経験を振り返り、共有する。

ストーリーテリングや発表の時間は、子どもたちがじっくり考えながらものづくりを進めていくために、大切な役割を果たしているのです。

現在、教室の内容は工作だけにとどまらず、劇や踊りまで幅広い表現活動を取り入れているそうです。

きっかけは学生時代のサークル。大人もワクワクするワークショップにしたい

現在、デザイナーとしても活躍している鈴木さんは、なぜ「こども図工教室 YAKKE」の活動を始めたのでしょうか。

「きっかけは大学時代に所属していたサークルなんです。子ども向けのワークショップをやっているサークルで、大勢の子と一緒に色々なものを作って遊んでいました。

その後、大学を卒業してからも個人でワークショップの仕事を受けるようになり、昨年の冬には大規模なワークショップを担当させてもらう機会があって。1人では難しいと思い、その時に久しぶりに大学時代の仲間に声をかけたんです」

久しぶりに大人数のメンバーでワークショップを行い、学生時代を思い出したという鈴木さん。

▲個性豊かなYAKKEのメンバー

「この頃は1人でワークショップをやることが増えていたので、みんなで一緒に子どもたちのことを考えるのってすごく楽しいなと思いました。協力してくれた仲間からは『毎週やりたいね』なんて声があがるほど(笑)。子どもだけじゃなくて、大人も目一杯楽しんでいるんだなと感じました。

さすがに毎週は無理だけど、月に1回くらいだったら子ども向けのワークショップをやれるかな〜?と思っていた時、自分の会社の撮影スタジオを使えることになり、YAKKEの企画を考え始めたんです」

YAKKE(やっけ)という名前は、鈴木さんの感覚によって名付けられたのだそう。

「最初はシンプルに『こども図工教室』という名前にしようかなと考えていたんですけど、子どもたちが言いづらいと良くないじゃないですか。

あまり深い意味を持たせず、あだ名とか挨拶みたいに気軽に口に出しやすい言葉……『やっけ』ってどうだろう!?とひらいめいて。感覚的に思いついた言葉なんですけど、メンバーからも好評でした」

鈴木さんは自身を含め教室に参加する大人たちのことを「おおきなこども」と表現しており、YAKKEが子どもたちだけでなく大人にとっても楽しい場となることを、活動初期から大切にし続けています。

可愛い<負けられない!子どもはみんなものづくりのライバル

ものづくりのプロである鈴木さん。YAKKEの活動を通して子どもたちにどんなことを伝えたいと考えているのでしょうか。

「私自身は子どもの頃から絵を描くことが好きで、そのまま大きくなっちゃったような人間なんです。話すことはあまり得意ではなかったけれど、描いた絵をきっかけに友達ができることも多くて。両親はそんな私の姿を認めてくれて、表現できる場所を小さな頃からたくさん作ってくれていました。

でも、自分が大人になってふと周りを見渡してみた時に、思い切り何かを表現したり、それを認めてもらえる場所って案外ないな……と気づきました。せっかくものづくりに興味があるのに、表現できる場所やそれを認めてくれる人がいないから諦めてしまうのは、すごくもったいないと思うんですよね。思い切り表現することを楽しんで、その表現を自信に変えていく。YAKKEがみんなにとってそんな場所になったらいいなと思っています」

「個人的には『子どもが大好き!』という気持ちよりも『負けてられない!』という気持ちのほうが大きいんですよね。彼らは大人の予想を遥かに超えてきます。私が思いつかないような表現を見せられると、悔しくなって『大人の力を見てろよ』って燃えちゃう(笑)。子どもたちは私のライバルなんです」

家族や先生ではない第三の大人が、認めてくれてもいいじゃない

取材に行った日の図工教室で、ちょっと嬉しいことがあったという鈴木さん。

「参加者の男の子が『俺、この場所がいちばん好きだわ!』って叫んで帰っていったんです。もう、すごく嬉しかった……!もしも学校がつまらないと思っている子がいても、YAKKEが楽しい場所になっていたらいいな。家と学校以外の第三の場所。おうちの人や先生以外にも認めてくれる大人がいる図工教室です。実はそれって私にとっても同じで、YAKKEという自分の得意なことを形にできる場所があって、今、すごく楽しいんです」

のびのびと表現し、それを分かち合うことのできる図工教室は、子どもにとっても大人にとっても、通うのが楽しい場所になっているようです。

2019年9月の時点で、6回目の開催を終えたYAKKE。現在は関東外から足を運んでくれる参加者もいるのだとか。

今後も大人向けのイベントや、大規模なものづくりフェスを計画しているそうです。

続報をお楽しみに!

(取材/文 佐藤愛美)

【information】

こども図工教室 YAKKE

主な活動場所:FACTORY

東京都世田谷区奥沢8-3-2 B2F

(大井町線 九品仏駅から徒歩7分)

活動日程:毎月1回

日程は決まり次第情報発信しています。

参加方法:Peatixにてチケットを販売(定員に達し次第終了)

https://factory.peatix.com

対象年齢:4〜12歳(それ以外の方はご相談ください)

お問い合わせyakke.kids@gmail.com(代表・鈴木)

インスタ@yakke_kids(お申し込みの詳細はこちら)

Twitter @yuidentity

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