「子育てって楽しいこともあるけど、そうじゃない時もある。自分でどうしていいか分からない気持ちになることって、ママなら誰でもある。そんな時にいつでも足を運んで何でも話せる場所を作りたかったの」
神奈川県川崎市に親子カフェを立ち上げた尾本和琴さんは、保育士であり三児の母。
公立保育園で働いた経験、そしてご自身の育児経験をもとに、親子が安心して訪れることのできる場所作りを実現しました。
「ママがきらきら輝くことで子どもも輝く」がコンセプトの親子カフェkirakira。
尾本さんだからこそできる、ママと子どものための居場所づくりとは?
お話を聞いてみました。
尾本和琴さん
保育士。川崎市の公立保育園に16年勤務し、三人の子育て奮闘中の現在シングルママ。退職後、2014年に親子カフェkirakiraをオープン。月300人以上のママたちと接している。離乳食やキッズメニューを含むランチメニューの提供や、親子向け・ママ向けのイベントを定期的に開催したり、保育士ならではの子育て相談や講座の担当も行う。
ママたちの「これが欲しかった!」がたくさん詰まったカフェ
JR南武線「鹿島田」駅から徒歩5分の場所にある親子カフェkirakira。
もともとは床屋さんだったという建物は、リノベーションを経て明るい雰囲気のカフェに生まれ変わりました。ピンクの壁や天井のシャンデリアも尾本さんのアイデア。可愛らしい内装は、訪れるママたちの気持ちを明るくしてくれます。
トイレの中にもベビーベッドが設置されているなど、いたるところに細かい仕掛けが。保育士の視点やご自身の子育て経験を活かし、ママたちの「これが欲しかった!」を実現しています。
取材をしていると赤ちゃん連れのママたちがやってきました。この日はベビーダンスのイベントの開催日だったようです。
kirakiraではベビーマッサージや赤ちゃん撮影会、パン教室など親子で参加できる楽しいイベントを開催しているほか、ネイルやカイロプラクティックなどママの癒しの時間を提供中。
カフェ内で一時預かりも行なっているので、ネイルやマッサージなどの施術を行なっている時は子育てからちょっと離れて、1人の時間に集中することができるんです。
ランチメニューには子ども向けの献立もあり好評。
離乳食メニューは「初期」「中期」「後期」「完了期」と段階ごとに食べやすく調理されているので、おうちで過ごす時と同じように食事ができます。家から子ども用の食事を持参する必要はありません。
kirakiraを訪れる人同士の輪も大切にしているという尾本さん。
イベントの後には参加者同士でランチを食べる時間を設け、初めて来た人でも疎外感を感じることがないように、講師が間に入ってコミュニケーションしやすい雰囲気を作るなど工夫しているそうです。
「すでにできているママ友の輪の中に入りにくいとか、初めて来た人が常連さんに遠慮してしまうとか、そういう絶妙な問題ってあるじゃないですか。カフェに来たママが誰も気まずい思いをすることがないように、私たちが間に入って輪を作っていけたらなと思っています。
でも、意外と私が入らなくてもママ同士で輪ができているんですけどね(笑)。ベビーカーを準備する時に助け合ったり、育児の情報交換をしたり。ここで色んな人と出会って、辛い時に辛いって言い合える仲間を作ってほしいなと思います」と尾本さん。
子育てを分かち合える場所。苦しくなる前に、駆け込んでくれたら
公立保育園で保育士の仕事をしていたという尾本さん、どうして親子カフェを立ち上げたのでしょうか?
「私自身が3人の子どもを育てて、子育ての苦しさを知りました。保育士なのに、私って子育てが上手じゃないなあって思った時もあって。頑張っているのにままならないことも多くて、自分の感情をどうしていいか分からなくなってしまったり。そんな時、同じ職場の先輩やママ友に相談したら心が軽くなって。本やネットで調べるよりも、実際に人と話をするのって大事だと思ったんです」
子育ては楽しいけど苦しい。そんな本音をフラットに話せる場所があったら、苦しい気持ちが緩和されるのではないか?と考えた尾本さん。親子カフェをつくり、保育園ではできない子育て支援をやってみようと立ち上がります。
「保育園で働いている時は、“先生”と呼ばれる立場になります。先生だからできる支援もあるけど、ママたちともう少し同じ目線で共感することができる保育士になりたいと思っていました。『そんなの大丈夫だよ、よくあるよ〜』って話を聞いたり元気づけることができる存在になりたかったんですよね。自治体の育児相談だとちょっと敷居が高いけど、いつでも気軽に訪れることができる場所づくりを目指しています」
kirakiraには、常連のママから、引っ越してきたばかりで地域に誰も知り合いがいないというママまで色々な方がやってきます。
「ここがあって良かった」という言葉を聞くたび、ママたちがいつでも来ることができる場所を構えることの意味を痛感するという尾本さん。
「保育士として働く中で、追い詰められて疲弊してしまうママたちの姿をたくさん見てきました。疲れてしまった結果、子どもたちに辛く当たってしまう人も。ニュースを見ていると虐待の事件がクローズアップされているけど、いつ誰がそうなってもおかしくないんですよね。環境が少し違えば私がそうなっていた可能性もある。そうなる前に、息抜きをできる場所が必要だと思うんです」
ここで、子どもたちの成長を見守っていく喜び
カフェをやっていて一番嬉しいことは何ですか?
「こうしてお店を開いていると、たまに嬉しいサプライズがあるんですよ。保育園で働いていた時の教え子が会いに来てくれて。子どもたちに再会して、大きくなった姿を見られるのは本当に嬉しい。それはお客さんのお子さんたちに対しても同じで。小さかった赤ちゃんが大きくなっていく姿を見たり、第二子や第三子が生まれたことをお母さんと一緒に喜べる瞬間も自分にとってプレゼントですね」と尾本さん。
親子カフェは子どもの成長に伴い自然と「卒業」してしまう場所ではあるけれど、大きくなった子どもたちがいつでも帰って来られる場所なのかもしれませんね。
ママがきらきら輝くことで子どもも輝く。
親子カフェkirakiraは、ママと子どものパワースポットのような存在です。
「誰かに育児の話を聞いてほしい」そう思った時に、ちょっと立ち寄ってみませんか。
(取材・文/佐藤 愛美)
【information】
親子カフェkirakira
住所:神奈川県川崎市幸区下平間48
お問い合わせ:044-201-4414
営業時間:11:00~14:30
アクセス:南武線「鹿島田」駅から徒歩5分
HP http://kirakira-oyakocafe.com/
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